雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
突然の雨は時に二人を悪戯に近付けた
 エビ10(テン)が発表された三日後の昼休み。相も変わらず騒がしい二年三組の教室は、一組の野原絵里奈(のはらえりな)が廊下からひょっこり顔を覗かせた事で、そのざわめきが一瞬静まり返った。


「九条くん、ちょっといい?」


 顔に負けないくらいキュートな声で絵里奈が帆鷹(ほだか)を呼び、「ちょっと来て」と、手で合図を送っている。何食わぬ顔で廊下に出て行こうとする帆鷹を新太(あらた)が鼻息荒く引き留めた。


「ちょっ、帆鷹。野原絵里奈とどういう関係!?」


「同中って話してなかったっけ?」


 しらっと言う帆鷹に、新太が興奮しながら耳打ちする。


「聞いてねーよ。で? エビ10二年女子一位の野原絵里奈が帆鷹に何の話!?」


「知らねーよ。それを今から聞きに行くんだろ」


「あっ、そっか。帰って来たら、ちゃんと報告しろよー」


 帆鷹は何も答えず、新太へと後ろ手に手を振ると教室を出て行った。そんな帆鷹の背中を見送って、ふと戻した視線の先に、新太は何故か穂香(ほのか)と目が合った。話し相手を見つけたと言わんばかりに、穂香の席へと駆け寄る新太。
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