それを愛だというのなら


やっと上がれると思ったところでちらっと遠くのレーンを見ると、見覚えのある人がこっちを見てふきだし、パッと顔をそらした。


「け、健斗……!」


六レーンあるプールは三レーンずつ、男女で分けて使うことになっている。

そして、体育はいつも理系クラスと合同。

つまり、男子専用レーンの方には、健斗がいるということ。

なんてこと。いつもサボりがちだって言っていた体育の授業。今日に限っているなんて。

きっと、もがいている私を見て笑ったんだ。

自分だって水泳用の帽子が似合ってない。あとで言ってやるんだから。


「うちらも自分の体形気になるけどさ、男子も個人差ってあるのねー」


ヒトミはあいつは痩せすぎ、あいつは太りすぎ、と勝手に男子に点数をつけている。

健斗は……まあやせ形ではあるけど、適度に筋肉がついているのかな。

それほど貧相にも見えず、ムキムキでもなかった。ちょうどいい感じ。

なんとなく恥ずかしくて、あまりしっかりは見られないけれど……。


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