それを愛だというのなら
ねえ、健斗。
本当は私、あと一か月と少しで、ここからいなくなってしまうの。
そんなこと到底言えなくて、口を閉じる。
その瞬間、健斗の顔がぐっと近づいてきた。
何を言われたわけでもないのに、私はまぶたを閉じる。
ふと、温かくて柔らかいものが唇に触れた。
私は当然のようにそれを受け入れる。
何度も、何度も。
羽根のように優しいキスが、私に降り注ぐ。
──好きだよ。大好きだよ。
なのに、ごめんね──。
やがて、花火が再び上がりはじめた。
きらびやかだった打ち上げ花火が、涙で曇った目に映り、にじんで消えた。
それはとてもとても儚く、悲しいものに見えた。