それを愛だというのなら


そうか……死神くんは、ただ奇跡を起こしたというわけじゃなかったんだ。

この健康な体は、もともと一生のうちに分けて使うはずだった生命力を、前倒しにしてしまっただけ……。

今までより弱くなるって、どの程度になるんだろう。

今までだって私的にはけっこうきつかった。それ以上の生活なんて、想像つかない。

これから一生、ベッド上安静なんてことになってしまったら、それこそ何のために生きているのかわからない。

家族にも多大な迷惑をかけるだろう。

健斗に会うことだってできないかもしれない。


「どうしたらいいの……」


このままあと一か月と少し、元気なまま生きて、ぽっくり死ぬ?

病気と共に生き延びて、いつ尽きるかわからない寿命を怯えてすごす?

今までの私なら、間違いなく前者を選んだだろう。

だけど……。

ねえ、みんな。教えてほしいよ。

私が病気のまま生きているのと、あっさり死んでしまうのと、正直どっちが助かる?


「お前が決めればいい。どっちでも間違いではないし、また正解もない」


偉そうに言ってるけど、全然参考にならない。


「契約破棄するなら、早い方が良い。残りの人生が、よりつらくならないように」


それだけ言うと、死神くんは足元から煙のようにほどけて消えていった。


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