それを愛だというのなら
「わああ!」
「あぶねっ」
見事に転んで轢かれたカエル状態になりそうだった私を、健斗が抱きとめてくれる。
「アホか。退院したその日に怪我するなよ」
健斗の腕の中にすっぽりとおさまった私の頭上で、はああと深いため息が聞こえて、思わず笑ってしまった。
ねえ、健斗。
健斗がこうやって駆けつけてくれるうちは、私前向きに頑張れそうだよ。
不意に玄関が開いて、健斗が思い切り私から離れた。その動きは、忍者のように素早い。
「あら……こんにちは。上がっていってよ」
ドアの隙間から顔を覗かせるお母さんが、健斗に笑いかける。
「あ、え、あの」
私には見せたことのないような焦りの表情を浮かべ、しどろもどろになる健斗。
そんな様子がおかしくて、笑ってしまった。
入院中には出せなかった大きな声で、私は笑った。