それを愛だというのなら


ヒトミが指さしたのは、目の前の通りの向こう側にあるコンビニだった。

イートインスペースと呼ぶにはあまりに小さいテーブルとイスが隅においやられるように置かれている。

自転車を店の前に停めた私たちは、それぞれプラスチックのカップに入った小さなパフェを注文し、そのテーブルを挟んで座った。


「で、早速なんだけど」


ヒトミがじっと私を見るので、パフェにがっつこうとしていた手が止まってしまう。


「瑞穂、水沢健斗と付き合ってるって本当? 図書館で見た子がいるって」

「あ、うん……本当」


まあ隠すこともないだろうと、正直にうなずく。

すると、ヒトミの表情が、まるで苦いものでも食べてしまった人のように歪んだ。


「どうして水沢なの?」

「どうしてって」

「理系クラスの友達が言ってたんだけど。あ、その友達っていうのは、私の中学からのつきあいなのね。で、その友達が、水沢って顔はいいけど、素行が悪いんだって言ってた」

「はあ」


曖昧な相槌を打つと、ヒトミは乗りだして話を続ける。


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