僕の星

平凡な少女

 10月25日 木曜日。

 里奈は今、修学旅行で奈良に来ている。


 一行を乗せたバスは奈良市内を走り、やがて奈良公園に到着した。

 生徒達はリュックを背負い、バスからぞろぞろと降りる。グループごとに固まると、教師の指示を仰いだ。

 これから二時間、奈良公園と周辺の歴史的建造物の見学をする。

 6人ずつのグループに分かれての行動で、里奈達のグループは、まず東大寺に向かうことになった。



 初めて見る大仏の大きさに里奈は驚くが、広目天、多聞天という二体の四天王像にも目を奪われた。

 荒々しさと静けさが合わさったような不思議な魅力。
 中国の武将のような鎧を身に着けている。

「かっこいいなあ」

 里奈は3年前に観た、中国の歴史スペクタクル映画を思い出した。

「こんな感じだったよね、あの映画」

 隣で同じように見上げる城崎(しろさき)ゆかりに話しかけた。里奈の中学時代からの友達で、一緒に映画を観に行っている。

 ゆかりは眼鏡の位置を指先で直しながら、

「うん、そうそう。面白かったよね、あの映画」

 細い目を眩しそうにして、笑った。
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