リアルな恋は落ち着かない
3.
それから約二週間。

いろいろ心配していたけれど、状況の変化はとくになかった。

美瑠久ちゃんは、相変わらず私が五十嵐くんを好きだと誤解してるけど、約束通り、他言はしていないようだった。

おしゃべり好きな美瑠久ちゃんだけど、女子として、恋の秘密は絶対厳守するらしい。

ここは安心できるので、私もあえて余計なことはもう言わないことにした。

そして、阿部課長も以前と変わらず、オトナな感じでとても優しい。

時々、はっとしたように会話の途中で突然「じゃあ!」と去ったりされてしまうけど、それ以外は変わらず接してくれるので、なるべく気にしないよう自分に言い聞かせている。


(結局飲みにも誘われないから、あれは、ただの社交辞令だったのかな)


ほっとした気持ちと残念な気持ちが、正直入り混じっている。

けれどこれ以上なにも事態を動かさないよう、課長への憧れは封印することにした。


(『不倫』だって思われるのは、やっぱり私は耐えられないし・・・)


五十嵐くんがしている誤解も、やっぱり解けていないまま。

もちろん、一刻も早く解きたい気持ちはあるけれど、彼とは仕事のこと以外、なかなか話せる機会がなかった。

もともと話しかけにくい上、美瑠久ちゃんのにやにや視線も気になって、必要以上に五十嵐くんに近づくことは、やっぱりできなかったのだ。
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