狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
3 束の間の恋心
『悪い赤野。ちょっと急用が出来た。ここの最上階に社員食堂があるから…オマエ、そこでコーヒーでも飲んで、30分後にここに戻って来い』
 
千円札を渡されて、
彼にそう耳打ちされた私は、
5階の食堂でコーヒーを頂いていたのだが…

う~~む。
しかしさっきの女(ヒト)、
“カノジョ” だったのかなぁ。

まああれだけの美形だ。
カノジョくら居ても全然不思議はない。


でもさあ?
大神さんのカノジョにしては
オトナシイというか野暮ったいというか……

何て言うか、あれはないよな~。
お化粧が古臭くて濃すぎだし、
服装だいぶチグハグだし。

あれならまだ私の方が……

はっ、
私ってば、見ず知らずの人に何てシツレイな!超性格美人かも知れないじゃないか。

これってもしかして……嫉妬?

きっとそうだ!
やっぱりコレ、恋だね恋。

私ってば恋するオトメ?
なーんてね。


バカなコトを考えているうちに、
壁時計が約束の30分を指していた。

…そろそろ時間だ。

私は席を立ち、中庭に向けて出発した。



だが___

もしこの時、食堂の壁時計が10分早い時を示していなければ。

私のこれからの未来は、
ホンの少しだけ変わっていたのかもしれない。
< 18 / 269 >

この作品をシェア

pagetop