狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
2 お泊り出張
そんな鉛色の日々を過ごしていたある日の事。
私にとって、とんでもない災厄がもたらされた。

「ええ‼出張ですか。しかも…」

大神さんと2人で1泊2日だぁ~⁉
彼はフーッと溜め息を吐いた。

「仕方がないだろ。この課でヒマな奴なんて、お前くらいのもんだし」

絶対に嫌だ。私は抵抗を試みた。

「で、でも私ぃ~。
足引っ張ちゃうだけですしぃ~?
ほら!優秀なリーダーお1人で行かれた方が…
経費節減にもなるってか、ね?」
 
「黙れ新人、気色悪いしゃべり方すんな。
こっちにはこっちの都合があんだよ。
1週間後に静岡支店。
さっさと旅行の手配してこい!」
「……ハイ」

「声がちっさい‼」
「うぁいっ‼」

あえなく敗れ、出かける準備をはじめた私に、水野女史がキラリと眼鏡を光らせた。

「赤野さん…お気をつけなさい」
「?」

どう返したら良いものか分からず、ペコリと頭を下げてから、ヨロヨロと金券ショップに向かった私は……

その後ろ姿を皆が息を潜めて見送っていたことには、モチロン気が付かなかった。
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