したたかな彼女
オムライス

十三日の朝。

工場で夜勤明けのよしきは、お昼にオムライスを作ってくれるという。




志保とまりえの二人は一つの机の上に二つの鏡を置き、一緒に化粧をした。

お互いにいつもより念入りで、気合が入っている。



「あ~! 今日にかぎって一段とブス!」

志保は鏡に向かって怒る。


「あー、わかる」。 とまりえも言う。


失敗したくない日にかぎって、うまくいかない。



「でも志保ちゃんかわいいのに」


「まりえちゃんに言われても説得力ない」


「なんでよ~! あたし志保ちゃんの顔好きなのに~! 鼻高いしぃ、二重も大きいしさぁ・・・」


「でもまりえちゃんはくっきりした目でいいじゃない。 お人形みたいでかわいいし」


「いーや」


「わがまま」


「そっちこそわがまま!」


まりえは手をのばして志保の肩をたたく。



「あはははは!」

二人は笑いながら、また化粧をする。


< 36 / 57 >

この作品をシェア

pagetop