カワイイ子猫のつくり方
さまよえる魂?
『ごめんね、伊織くん。実は院内に入った所で突然荷物からミコちゃんが飛び出してさ、それで初めて連れて来ちゃったことに気付いたんだよ』

「…それで、今アイツは?」

『ごめんっ。実はそのまま逃げられちゃってさー、見失っちゃったんだ』

心底参っているような電話越しの父の声に、朝霧は小さく溜息をついた。

(ミコの奴、絶対確信犯だな…)

『ホント悪いっ!でも実は、僕はこれから会議に出なくちゃいけないんだ。本当に申し訳ないんだけど伊織くんにミコちゃん、お願いしても良いかな?』


勿論、父親の多忙過ぎる日々の現状は痛い程良く解っているし、飼い主としてもこのまま放置することなど出来るはずもなく。

朝霧は、すぐに父親の病院へと向かうことにした。




普段の休日なら、まだ家でゆっくりしている時間。

だが、朝霧は自転車を飛ばしていた。


病院へは車でもおおよそ30分は掛かる。

だが自分で行くとなるとバスを乗り継いで行くしかなく、帰り道にミコを連れ帰ることを前提に考えた場合、自転車で向かった方が得策と考えたのだ。

(まだ騒ぎにはなってないと言っていたが、時間の問題だよな)

見つかったら即、つまみ出されるだろう。

いや、つまみ出されるだけならまだ良い。

(追い掛けられることでパニクって院内で暴れるようなことがあったら、大きな被害が出兼ねない…)


ただ、あのミコのことだ。

上手く(しの)いでくれることを願うだけだった。
< 107 / 220 >

この作品をシェア

pagetop