もう一度君に会えたなら
それぞれの進む道
 わたしが回答を見せると、長い髪を一つに束ねた沙希さんは顔を曇らせた。

「答えはbよ」

 言われて答えを確認したが、確かにそんな気がした。

「さすが」

 わたしの隣に座っていた榮子は苦笑いを浮かべた。

 もう季節は夏休みに入っていた。高校最後の夏休みだが、休みという気配は全くない。
 学校では補修だし、家に帰っても勉強だ。

 沙希さんがわからないところを教えてくれるというので、わたしたちは榮子の家で勉強をすることになったのだ。

「さすがというより、理系のわたしより英語も国語もできないのは大問題だと思うわ」

 沙希さんは大げさに肩をすくめた。

「いや、沙希さんはちょっとおかしいよ」

 そう榮子はジュースを飲みながら、言葉を濁した。
 彼女もそれなりに勉強ができると思っていたが、半端なかった。

 彼女は医学部志望で、学年でも入学以来トップクラスを争っていた。
 バイトも続けていて、それなりの成績を維持している彼女はどんな頭をしているのか謎めいていた。
 ただ、記憶力が半端なく良いのはよくわかる。
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