もう一度君に会えたなら
思いがけない再会
 わたしはあくびをかみ殺すと、机の上で顔を伏せた。
 またあの変な夢だ。
 だが、妙に懐かしい気がするのは気のせいなのだろうか。
 そんなの気のせいでしかないのは分かっているのに。

 こんなことを延々としていてもどうしょうもない。

「そんなことより英語のプリントをしないと」

 そう呟き、ベッドから起き上がったタイミングを見計らったかのように、携帯が鳴った。飛びつくように確認したが、発信主は榮子だった。
 わたしは落胆を滲ませて、電話を取った。

「今日、遊びに行かない?」
「いいけど、どこに?」
「唯香の好きな場所でいいよ。日帰りできる範囲ならどこでも付き合う」

「どうして?」
「今日は一人でいたくないんじゃないかなと思ってね。つきあってあげるよ」

 わたしが断られた日ということを気にしているのだろう。
 ふっと潮の香りが鼻先をついた気がした。当然、気のせいであることも分かっていた。

 何かが頭の中に蘇りそうになる。その何かは分厚い不透明なガラスで覆われたように、その先を見ることができない。
 だが、その不鮮明なものに抗うように、わたしの唇から自然に言葉が毀れた。

「海に行きたい」
「海ってまだ寒いよ。まさか泳いだりしないよね」
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