オトナの恋は強引です!
歩道から海を見ると、
高い波の海に
馬鹿なサーファーが数人いる。

「…馬鹿じゃないの?!」と思わずつぶやく。
赤いウェットスーツが波の間に見え隠れする。
ドラゴン。
波に立つ赤いウェットスーツが見えたと、思ったら、大きく波に投げ出される。
姿が見えない。
どこ?

赤いウェットスーツが浮き上がって来たけど、動いてない気がする。
他のサーファー仲間も、様子がおかしいことに気がついて
ドラゴンに近付いて抱えるようにして、大声で名前を呼んでいる。
私は夢中で砂浜に降りた。
「救急車!」と砂浜に居た人に叫ぶ。

砂浜にドラゴンが横たえられた。気を失っている。
私は慌ててグッタリした胸に顔を寄せる。鼓動は聞こえる。
頭から血が出ていた。
指で傷を確認する。
キズは派手だけど、浅そうだ。
息をしていない。
水飲んだ?
横を向かせてためらいなく、
喉の奥に指を突っ込んだ。
嘔吐反射が起こり、激しく水を嘔吐する。手に歯が当たるけど、痛みは感じない。
2、3度繰り返すと、何度も咳き込んで息を吸い込んだ。もう、大丈夫。
頭の傷を誰かのタオルで押さえながら、
「竜二!」と何度も呼ぶとうっすら目を開けた。
「…サクラ」と口を動かす。よかった。
救急車の音が近づく。


救急隊員によって止血され、
運ばれる
見知らぬ友人が一緒に付き添い、
「あなたは?乗りますか?」と聞かれるが、
くびを横にふり、ふらふらと来た道を帰る。
サーファー仲間がありがとうと私に口々に話しかけてくるけど、
言葉が私の中に届かない。
ただ、怖かった。
とても、とても怖くて、
ドラゴンは助かったのだと
その事だけで
私の心は一杯だった。

部屋に戻って砂だらけのままバスルームに入って服を脱ぎシャワーを浴びた。
コムギにドラゴンが救急搬送された。
とラインをいれる。
きっと、タイガさんから家族に連絡がいくだろう。
そうして私は、
震えて泣きながら 、ベッドのなかで固く目を閉じた。




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