3.臆病な愛 Four o’clock flower

 どうして彼の提案を受け入れてしまったのだろう――純正の帰宅を待ちながら花名は思う。

数百万円の治療を無償で提供する代わりに、自分の身の回りの世話をしてほしいと純正は言った。
食材や日用品を買うためにと十万円を渡されて、勢いで受け取ってしまったのだけれど、あの時は正常な判断が出来なかったのだ。

家事はあまり得意な方ではない。料理だってそうだ。普通の家庭料理程度なら作れるが、純正を満足させられるはずがない。最大限の努力はするつもりだが、母親の治療費同等の仕事ができるとは到底思えなかった。

今になって後悔の念が沸き上がってくる。

(でも私、お母さんの命を助けるためにはなんだってするって決めたじゃない。だから、これでよかったのよ)

花名は自分の決断に間違いはなかったのだと一生懸命言い聞かせることしかできなかった。