「もう、イヤだ……」

とぼとぼと大通りを歩く私を、すれ違う人が皆ギョッとした顔で振り返る。

泣きはらした目、生気のない顔。

誰だってびっくりするだろう。

私だってびっくりだ。

何でこんなことになっているの?

一体何が私の身に起こったんだっけ?

ああ、そういえば。

始まりは、勤からの久々のデートの誘いだったっけ……。




付き合って二年になる恋人から、「明日、時間ある?」といつものように素っ気ないメールが届いた。

私から誘っても「忙しいんだ」と断り続けられていたので、勤(つとむ)から誘われたことがとても嬉しかった。

早速「大丈夫だよ!」と返信する。

しばらく経ってから待ち合わせ場所と時間を示すメールが届いて、それに「了解!」と返事をすると、クローゼットに向かい明日の準備を始めたのだった。

そして翌日。

ウキウキした気分で待ち合わせ場所に行った私を待っていたのは。

「ごめん、琴乃(ことの)。俺と別れてくれないか」

そうやって頭を下げる、勤と。

「お願いします、桐原(きりはら)センパイ」

勤の横で可愛く首を傾げる、希美(のぞみ)ちゃんの姿だった……。




同じデザイン事務所に勤める勤のことは、入社当時から知っていた。

二歳年上の営業マン。

たくさん仕事を取ってくるだけでなく、デザイナー側にも気を遣えるすごい人。

美大を卒業して入社した私は、彼と話をすることは中々なかったけれど、いつも笑顔でデザイン部にやってくる彼に、淡い憧れを抱いていたんだ。

ふたりの関係が変わったのは、入社五年目の春。

すっかり仕事にも慣れて自分のちょっとしたイラストが採用されるようになっていた私は、会社のお花見でたまたま勤と隣同士で座ることになった。