イジワル副社長に拾われました。
と、あっさり言われてしまった。

「だから、この間の彼との社内恋愛はごまかせてたっていうのが、私には不思議でならないのよねえ」

「わ、私のことはいいんですよ。それよりも、未来さんと宗介さんのなれそめ聞きたいですっ!」

恥ずかしくなってきて話を振れば、意外や意外、あっさりと未来さんは宗介さんとの出会いを話してくれた。

「ちょうどスペシャリストアドバイザーの試験に受かった頃にね、当時付き合っていた彼にフラれたの」

「え? 未来さんが失恋?」

「そうよー。『俺は後ろをついて歩いてくれるおしとやかな子が好きなんだ』って。どうやら仕事をバリバリする女性は彼の好みじゃなかったみたい。で、バーでヤケ酒してたら、たまたま仕事でやってきてた宗介が飲みに来てて、『俺は働く女の子、好きだけどー』って」

「それってナンパですか?」

「ふふっ。そうかもね」

当時を思い出したのか、未来さんは懐かしそうに目を細めた。

「で、本社で今の業務に就くことになって東京に来てね、航を介して再会したの」

「じゃあ、最初に会ったときには連絡先の交換とかもしてなかったってことですか?」

「うん。まったく。だから、航の友達って聞いてびっくりしたもん」

「すごい、なんだか運命の出会いって感じですね」

私の言葉に、未来さんが照れくさそうに微笑んだ。

「だけど向こうは、私が香月で働いてること知ってたから、航にでも聞けばどこかで出会えるって思ってはいたみたいよ」

「……そっか、スペシャリストアドバイザーの話を聞いてたら、ある程度絞り込みはできますもんね」

「ま、あのバカがそこまで思ってたかはわかんないけどね」

未来さんがそう言いながら立ち上がった瞬間、ドアが開いて。

「連絡先聞くの忘れて後悔したあとに、それに気づいてすっげー喜んだけどね~」

と、突然男の人が現れた。

「ただいま、未来」

そうやって歯を見せて笑った、笑顔の素敵な男の人は。

「そ、宗介!?」

テレビの横の写真立ての中の、未来さんの彼氏だった――

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