イジワル副社長に拾われました。
「そうです。私だって、怖かったです。でも、ここでちゃんと自分の気持ちを伝えないと、変われないと思ったから。あきらめてばかりの自分を変えていかなきゃいけないと思ったから。だから、頑張って勇気出したんです」

スッと、白井さんの長い指が私の頬に触れるのを感じたとき、私は自分が泣いていることに気づいた。

「お前はホント、感情豊かだなあ」

私の涙をぬぐいながら、白井さんが笑う。

「すぐにあきらめるって言ってしまえば短所かも知れないけど、言い換えれば周りのことを思って引くこともできる優しさを持ってるのは、長所でもある。だからお前は全部変わる必要はないんだよ。少しずつ、変わっていけばいい。俺のそばで」

ドキン、と心臓が高鳴った。

白井さんの優しい笑顔に見つめられて、動けなくなってしまう。

極上の笑顔を私に見せたまま、白井さんは口を開いた。

「好きだよ、お前のこと」

顔を真っ赤にして固まる私とは正反対に、涼しい顔を浮かべた白井さんは、フッ、と小さく笑みをこぼし、私の額にキスをした。


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