昼休み、さんざん悩んだ末、柚鈴にメールを送った。時間をあけずに返信があり、仕事の後、事務所で会うことになった。
 誰にも頼らない、と決意したが、すべてを自分の胸の中にしまっておくのはつらい。閉じ込めておきたくても、友広くんの発言の意味するところを考えると、不安で胸が爆発しそうな気持ちになってしまう。
 たぶん柚鈴なら彼の発言を客観的に判断してくれるはず。それに異性の友達も多い柚鈴のほうが断然男性の心理に詳しいと思う。
 仕事を終えて会社を出る。
 守衛所の前で会釈をし、顔を上げると見覚えのある黒い車が目に入った。おそるおそる近づいてみると、助手席の窓が開き、案の定運転手は高木さんだった。今日はサングラスをかけている。
「乗って」
 と、高木さんは急かすように言った。でも姉の恋人の車に当然という顔で図々しく乗り込むのもどうかと思うんだけど。
 車のそばで固まる私の脇を怪訝な面持ちの社員が通り過ぎる。ナンパや不審者だと思われたかな。見知らぬ人たちに横目でちらちらと見られるのは、私も気分が悪い。
 とりあえず乗ろう。
「では、失礼して」
「姫、今日から帰りだけワタクシがお迎えにあがります」
「え?」
「アイツの命令だから拒否権はないよ」
 高木さんはふざけた口調で言ったけど、どうやら冗談ではないらしい。
「マネージャーにそんな命令するなんて横暴ですね」
「ハハハ、でもアイツが入院している間は俺も暇だし、未莉ちゃんが嫌でなければタクシー代わりに使ってよ」
「じゃあ、今日はお言葉に甘えて、姉の事務所までお願いします」
 タクシー代わりなんて申し訳ない。
 頭を下げて運転席を見ると、高木さんは待っていましたとばかりにギアを入れアクセルを踏み込んだ。
「今、未莉ちゃんが考えていること、当ててみようか?」
「え?」
「俺に悪いと思っている」
「もちろんです」
 私は大きく頷いた。マネージャーとはいえ、こんな使いっ走りみたいなことばかりさせられて、高木さんこそ嫌じゃないのだろうか。
 そんな私の胸の内を見透かしたような笑みが高木さんの口元に浮かぶ。
「俺はこの仕事、楽しいけどな。ま、優輝も最初は未莉ちゃんみたいに遠慮ばかりしていたよ」
「そうなんですか? ちっとも想像できません」
「君たちはすごく似ているよ」
「……え? 誰と誰が?」
「優輝と未莉ちゃん」