気がつくと、私はベッドの上で暖かいふとんにくるまって眠っていた。遠くのほうからコーヒーの香りがする。誰かがキッチンでコーヒーを淹れているのだ、ととっさに考えた。
「未莉、あなたここのところ全然寝ていなかったでしょ?」
 寝室の戸口に姉の姿を発見する。
「お姉ちゃん!」
「もう、驚いたわよ。『突然気を失った』って高木くんがパニック状態で電話よこすから」
「すみません」
 高木さんがパニックになっているのを想像しながらあやまると、姉はベッド脇までやって来て、私の頬を触った。
「目の下に隈ができている。それに顔が全体的に青白いわ。食事もきちんととらなきゃ」
「食べてはいるよ。眠ってもいるし」
「そうかしら。どちらも質が悪いと効果はないんだからね」
 質がいいか悪いかを問題にすれば、それは確かに優輝の事故以来最悪だったけど、だからといってこんなときに寝坊するほど熟睡し「ご飯、おいしー!」なんて言えるわけがない。
 返事をせずに黙り込んでいると、姉はいきなりぷにっと私の頬をつまみ上げた。
「起き上がれる? たまご雑炊作ったから食べなさい」
「えっ、お姉ちゃんが作ったの?」
「そうよ。何か文句ある?」
「お料理できるようになったんだね」
「失礼ね。私だって簡単なお料理ならできるわよ。得意ではないけど……」
 姉は気まずそうにフンと顔をそむけると、逃げるように部屋を出ていった。どうやら照れているらしい。姉にもこんなふうにかわいい一面があるから、結局憎み切れないというか。
 リビングルームに向かうと、姉が少々おぼつかない手つきで熱々の雑炊をダイニングテーブルに置くところだった。
 そのほかほか雑炊のおいしそうな匂いに、私のお腹がきゅうっと鳴く。
「ほら、やっぱりお腹空いていたんだわ」
 にたりと笑う姉を見ないようにしつつ「いただきます」とスプーンを手に取った。
 姉は自分用のコーヒーを淹れると私の向かい側に腰かける。しばらく私がはふはふ言いながら雑炊を口に運ぶのを満足そうに眺めていたが、ふと真剣な表情になり、小首を傾げた。
「ん、何?」
「あなたたちのことだから、なんにも話をしていないんだろうな、と思ってね」
 そう言って姉はクスッと笑った。
「そんなことないけど」
 なぜかイライラする自分を抑え、さらりと返す。
「じゃあ、守岡くんのご家族の話は聞いた?」
「ご……かぞく?」