優輝の額に置いた手を引っ込めようとしたが、それより先に優輝が自らの手を重ねてきた。
「未莉の手が冷たくて気持ちいい」
「それより額に貼るシートとかないの?」
「ない」
「水枕は? 体温計は?」
「水枕はない。体温計は電池切れてる」
「使えないじゃない! 解熱剤は?」
「大声出すな。頭ガンガンする」
「す、すみません」
 しゅんとした私を慰めるように優輝はフッと笑った。潤んだ瞳で見つめられると心がズキズキと痛む。
 なんだろう、これ。普段隙のない人の弱っている姿は妙に庇護欲をそそられるといいますか、妙に色っぽくてドキドキするといいますか——って、何考えているの、私。
 だけど経験値の高い女性だったら、こんな絶好のシチュエーションを利用しないわけがないと思う。
 汗かいたでしょ? ほら、着替え持ってきたよ。ああ、起き上がらなくても大丈夫。私が脱がせてあげるから。あー、すごい汗! 待ってて、今きれいに拭いてあげるね——って、何考えているの、私!?
 ダメだ。危険だ。ここにいると看病よりも妄想をたくましくしてしまう。熱で苦しんでいる病人を目の前にして、なんと不謹慎な居候か。
 しかし、私は自分自身の急激な変化に愕然とした。
 妄想を振り払おうとしても、身体の奥のほうが熱くなり、以前優輝に触れられた場所がそわそわするのだ。
 ——やだ、どうしよう。こんなときに……。
 苦悶に歪む眉根が、荒く乱れる呼吸が、私の理性をものすごい勢いで侵食してくる。
 かつて彼の指に翻弄された胸の先端が、刺激を求め甘く切なく疼く。
 ——だーーーっ!!
「買い物行ってきます。何か食べたいものは?」
「……アイス」
 うん、と頷いたものの、なぜだか去りがたい。身も心もここにいたいと叫んでいる。
 ——いやいや、ダメだ。優輝に悟られる前に脱出しなくては。
 気だるげな彼の視線を振り切って、のろのろとベッドから降りた。