火事で焼け出された私が、優輝の部屋で過ごすようになってちょうど1週間。
 高級マンションでのひとり暮らしにも慣れ、本音を言えば、この快適な生活から抜け出すのが惜しいと思い始めていた。だから優輝の帰りが1日でも遅ければいい、とひそかに祈る私。優輝は2週間くらいかかるかもと言っていたし、まだ数日は猶予があるに違いない。
 会社から帰宅し、夕食を終えた私は、バスルームで湯に浸かりながらそんなことを考えていた。
 ロケに出かける直前、優輝が不機嫌だったのは、1週間の収録が予定通りに終わりそうもないのを見越してのことだ。普段の撮影も真夜中過ぎまでかかり、優輝は疲労と不満を溜め込んでいたのだろう。そんな優輝には悪いが、もう少しがんばって撮影されてきてください、と心の中でエールを送った。
 ほかほかになった私はバスルームを出て「あっ」と声を上げた。着替えを持ってくるのを忘れてしまった。
「ま、いっか」
 ひとり暮らしは他人の目がないので、気を遣わずのびのびできるのがいい。バスタオルを体に巻きつけて寝室へ向かう。廊下に出た私は、予期せぬガタンという物音に肩を震わせ、そこにあるはずのない人影を認めて息を呑んだ。
「ど、どうして!?」
 玄関に無表情の優輝が立っている。私をじっと見つめていたかと思うと、靴を脱いで近づいてきた。
「あの……!」
 後退りする私を壁際へ追い詰めた優輝は、私の頭を挟むようにして両腕をついた。耳のそばに優輝の顔が接近する。
「未莉、わかっていてやっているんだろうな」
「何を?」
「男の部屋でそんな格好していると、どうなるかってこと」
 私はバスタオルの合わせ目をぎゅっと握りしめた。うつむいて耳にかかる優輝の吐息をよける。
「……知りません」
「じゃあ教えてやろうか」
「け、けっこうです」
「遠慮するなよ」
 耳のふちに生暖かいものが触れる。ぞくりと身体が震えるのと同時に、触れているのが優輝の唇だと気がつく。
「……っ!」
 濡れた髪を優輝の長い指がそっと払い、彼の唇が首筋へと降りてくる。
「ちょっ、だめ……」
 優輝の肩をつかんで押し返したいところだけど、バスタオルから手を放すほうが危険なので、なんとか逃れようと懸命に身を捩った。でも抵抗すればするほど、優輝の腕の中に閉じ込められてしまう。