突然の大掃除を終え帰宅した私は、出社時に購入した雑誌を開いた。優輝がいつ帰ってくるかもわからないので、一応トイレに入り鍵をかけた上で、だ。
 優輝と明日香さんの記事を隅から隅まで舐めるように読む。
 読み終えてホッと息をついた。ふたりの熱愛は謎の関係者証言だけで、そのどれもが真実味のない、ありがちな内容だった。
 勢いで買ってしまったけど、どうしよう。女性週刊誌を袋にしまい、トイレから出る。
 優輝に見つからないうちに捨てようかな。とりあえず通勤かばんにでも入れておこうと思い、かばんを開くと携帯電話が鳴った。柚鈴だ。
『その後、守岡くんとはどんな感じ?』
 冷やかすような口ぶりだったので、私は「え、いや……」と言葉に詰まる。
『進展はありましたかね?』
「進展って、な、なんのこと?」
『当然おふたりの関係について、に決まっているでしょう』
「関係って……」
『だってさぁ、一緒に住んでいて何もないほうが不思議だよ』
「いや、まぁ、そう……かな」
『ほらほら、どうなの。ラブラブな感じ?』
「んー、ラブラブってどんな感じだろう。そういうのとはちょっと違う気がする」
『違う? でもキスくらいはするでしょ?』
 柚鈴がためらいもなくキスなんて言うから驚いた。
「す、する、かなぁ?」
『じゃあ私のかわいい未莉はもう彼のものになった、ということですかねぇ』
 ニヤニヤしている彼女の顔が思い浮かぶから、電話なのに熱くなった頬を空いている手で隠す。
「ちがっ……まだ、そんなんじゃないよ」
『あら、意外。でも『まだ』ということは、そろそろ?』
 私は返事に困って首を傾げた。もちろん電話だから柚鈴には見えないのだけど。
『おーい、未莉。聞こえているかー?』
「聞こえているよ。でもなんていうか私、優輝のこと全然知らないし、何を考えているのかわからなくて……」
『そっか。でも『好き』って言われたでしょう?』
 柚鈴の言葉は瞬時に鋭い針となり、私の胸を突いた。
「……言われていない。『興味ある』とは言っていたけど」
『ええーっ!』
 驚愕の叫びは小さなスピーカー部分から大音量で耳に響く。同時にそれも私がもやもやする原因のひとつだったらしいと気がついた。急に胸のあたりが重苦しくなる。
「でも昨日の夜、優輝は私に『今から未莉は俺の恋人な』って……」
『なるほど。つまり私は利用されたんだね』