同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
溺愛level2*二人きりで乾杯


その週の金曜日、定時の十七時を少し過ぎたところで、隣の部署から理央がやってきた。


「みちるー、もう行ける?」

「ゴメン、もうちょっとかかりそう……先行ってて?」


今日は、商品開発部全員参加の飲み会が予定されている。しかし、まだ事務仕事が残っていた私はパチンと両手を合わせて謝る。

理央は残念そうにしながらも、企画課のほうを振り返ってとある人物のデスクを見ながら言う。


「役職者は大変だね。吉沢部長はサクッと終わらせたみたいだけど、比留川くんは少し残業してから行くみたいだし……」

「……そうなんだ」


比留川くん……。あの会議の日以来、特に言葉を交わすことはないけれど、無意識に目で追ってしまう。

今日は、少しくらい話ができるかな。開発部全体で二十人もいるから、全く近づけない可能性もあるけど……。

そんなことを考えながら先にオフィスを出ていく理央を見送って、私は仕事に戻る。

今週分のクレームはそこまで多くなかったから、すぐに分類して集計しちゃおう。


パソコンとにらめっこしながら作業を進めること、一時間弱。

なんとかキリのいいところまで終えた私は、うーんと両手をあげて肩をコキコキ鳴らし、パソコンの電源を落とす。


「よしっ」


確認するようにひとりごちて、椅子から立ち上がった時だった。


「わっ! ……比留川、くん」


私のデスクのそばに佇んでいた彼の姿に驚き、思わず声を上げる。


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