同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
溺愛level9*君に恋するのは二度目 

side 迅



少々立て付けの悪い店の引き戸をガラッと開け、俺が座るのは、いつもの定位置、悪友の目の前のカウンター席。

月曜の夜だからか店は空いていて、いつもより賑やかさが落ち着いている。

立ち上る煙をうちわで扇ぎながら俺の姿に気付いた玄太は、いつもの軽い調子で話しかけてくる。


「よう迅。ひとりか?」

「いや……後から来る」


上着を脱いで椅子の背もたれに掛け、椅子に腰かけると同時に差し出されたおしぼりで、手を拭う。


「つーことはみちるちゃん戻ってきてくれたか! いやーよかったよかった」

「よくねーよ。まだ戻ってきたわけじゃねえし、沙弓のせいで変な勘違いされてるんだ」

「勘違いって?」

「俺がお前みたいないい加減なやつなんじゃないかって」


わざと不快感をあらわにして言った俺に、玄太が額に青筋を立てながら無理やり笑う。


「俺のどこがいい加減だって?」

「見た目と性格と生き様」

「お前ソレ全否定じゃねーか! これでも嫁とはうまくいってるっつの!」

「それは奥さんの人徳だ」


まるで八つ当たりをするように棘のあることばかりをぶつける俺に、玄太は怒るよりも呆れたらしく、手元の焼き鳥をくるくるひっくり返しながらため息交じりに話す。


「……でも、この後みちるちゃん来るんだろ? そんな誤解はさっさと解けばいいだけじゃねーか」


……そう。別にチャラいだの女たらしだのという部分は事実でないのだから、否定すればいいだけ。

それなのにどうも俺の気持ちが落ち着かないのは、未だ彼女に話していない秘密があるからだ。


< 142 / 236 >

この作品をシェア

pagetop