ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
魔法がとければ
月曜日になりオフィスへと向かった。
今日も1日暑くなりそうだと思いながら空を仰ぐ。



「おはよう、ケイ!」


赤い縁のメガネをかけた聖が後ろから声をかけてきた。


「お…おはよう」


ビックリして吃りかける。


「あの浴衣どう?着てみた?」


並んで歩きだす聖に聞かれ、うん…と小さく返事する。


「昨日何度も着る練習したの。真綾に借りた時はおばあちゃんに着せてもらったけど、今度は自分で着たいし」


祖母に教えて貰いながらの特訓。
私の買った浴衣を見て、祖母は「よく似合うよ」と言ってくれた。


「気合い入ってるね」

「ふふ。まぁね」


オフィス用の薄いメイクをした自分は魔法がとけたシンデレラ。
目立ちもしない顔でお団子ヘアで仕事する。


「向こうからは何か言ってきた?」

「ううん。何も」


呆気にとられてる。
無理もないけど。


「谷口さんてそういう人なの。送られてくるメールはいつも短いし」


その短文に同じような短さの返事を打つ。
二、三回それを繰り返したら暫く何も送られてこない。


「それって付き合ってるって言うの?」


不思議そうに聞き返された。


「どうだろうね」


私にもよくわからない。


笑ってごまかしながらオフィスへ着いた。
更衣室で着替えた後、検品課に向かってる最中のことだ。


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