課長の瞳で凍死します ~旅支度編~
いつも通りの夜
 


「なんで、伊勢なんだよ、真湖りん。
 海外行きなよ、海外。

 僕、パスポート持ってるんだよ」

 夜は、羽村たちが遊びに来て、いつものように宴会を始めた。

「……羽村さん、誰かいい人居ないんですか」
と真湖が言うと、

「嫌だよ。
 彼女なんか作ってたら、真湖りんが離婚したとき、始末に困るじゃん」
と言い出す。

「帰れ、羽村」
とソファに座る雅喜が言っていたが、羽村は気にする風でもない。

 台所でもくもくと料理をしている三上と、それにいちいち感心しながら、横から、もくもくとつまみ食いしているだけの浩太郎はこちらの騒ぎには無関心のようだった。

「そんな二人で旅行ばっかり行ってたら、死体見つけるのも時間の問題だよ」
と羽村は言う。

 何故? と思ったが。

 誰も見ていないのについているテレビでは、旅に出るたび、事件に遭遇するコンビの二時間ドラマをやっていた。
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