空を祈る紙ヒコーキ
変わりゆくリズム

 あれから私達は日が暮れるまで部室で話し合った。

 空と愛大は既存バンドのコピーはせずオリジナルの曲をメインにやっていきたいと熱望したので、そのためにはまず詩を書かなくてはいけなくなった。作詞は私、作曲は主に愛大の担当。

 空は受験生なので放課後は勉強の時間も必要だったしバイトもしている。塾には行かないけどそれなりの四年制大学へ行きたいと考えているらしい。特進科の生徒だしそうするのが当然かもしれないけど、マンガ家志望なら技術を高めるためそういう系の専門学校を目指すのかと思っていた。

 用事がない日以外、放課後の部活は全員参加。全員といっても私達三人だけだけど、今年度はもう軽音楽部に新しいメンバーが入ることはなさそうなのでその点は心配ない。それよりもまず曲を作るのが先決だという話になった。

「言うまでもないだろうけど、軽音楽部最大の活躍の場は学祭だ。発表時間は毎年だいたい三十分。その日までに自信曲を三つは完成させて演奏できるようになっていたい」

 思ったより地味な活動。軽音楽部と聞くとどうしても有名アーティストの姿が浮かび日頃から華々しい活動をするイメージが湧くけど、実際の活動は極めて地道なものだった。

「バンド活動なんて自己満足でしかないのかもしれない。特に俺らみたいな高校生なんてプロのアーティストからは程遠いよな。機材も部費も限りがあるしスポンサーとかもいない。でも、楽しむ気持ちがあれば問題なし!」

「完成した曲を人に聴いてもらっていい反応が返ってくるとやっててよかった〜って思うんですよね」

 ライブ経験者の空と愛大はその高揚感を思い出してうっとりと語り合うけど、二人の温度に私はまだついていけていない。

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