空を祈る紙ヒコーキ
空を祈る紙ヒコーキ

 空が何を言っているのか、熱くなる頭と震える心で一生懸命理解しようとした。

 電話口なので顔は見えないけど、空が意識して感情を抑えているのが分かる。その声は不自然なほど淡々としていた。

『嫌なら部活やめていいから。どうせ俺は秋の学祭終わったら引退するし、涼も愛大も無理に続けることない。家でも必要最低限しか話さないようにするから』

「待ってよ、誰もそんなこと言ってな……」

 言い終わらないうちに電話は切られてしまう。部分的にしか会話を拾えなかった愛大は血相を変えた。

「生徒会長、何て?」

「空が人殺しってことを知って私達が空のこと嫌になったと思ったみたい。部活やめていいって。バンドも無理に続けるなって。私そんなこと思ってないのに……」

 今になって、私の罪を赦し丸ごと受け入れてくれた愛大の気持ちが百パーセント理解できた。

 人殺しだなんて普通じゃないし物騒だし今まで体験したことの中で一番衝撃を受けているのは本当だけど、だからって空を嫌うことはできない。むしろ何があったのかと心配になるばかりだ。空の言う通り過去に何か罪を犯していたとしても責める言葉は浮かばない。無条件で赦したい。これからも空のそばにいたいから。

「アタシもだよ。部長として人として生徒会長のこと好きだもん! 一緒に曲を作った仲だよ、放っておけるわけない」

 私達の気持ちは同じだった。空と話したいーー!

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