空を祈る紙ヒコーキ
自意識過剰な約束

 普通あんなことがあったら忘れられないと思う。たとえ初対面だとしても。

 怪訝な顔をする私に、空は爽やかに言った。

「父さんから高取さんちの家族写真見せてもらってたんだ。ん……?」

 私の顔をまじまじと見てくる。何……?

「目、赤くなってる」

 さっきまで泣きながら走っていたから当然だ。それを隠すよう空に背を向け、元来た道を歩き出した。

「もう帰るんで」

「予定外の顔合わせだったけど、せっかくだしどっかで飯でも食べよ。バイト代出たばっかだし払いは任せて!」

 どこまでもお人よしな感じ。こっちの気も知らないノンキさが信じられず、ため息が出た。

「いいです」

 きっぱりと断った。

「夏原さんともその息子とも馴れ合う気ないんで」

 どうせいつか壊れてしまうものに情熱を傾けるほど純粋じゃない。この男も愛想良くしてくるのは最初だけで、そのうち本性を見せるに決まってる。

 男はクズだと父を見て学習した。初恋でもそれを嫌ほど思い知らされた。

 この空ってヤツもきっと同じだ。自分に都合が悪くなったら簡単に私を傷つける。そうに決まってる。

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