空を祈る紙ヒコーキ
初めての味方

 私の言葉を聞いて、空はあからさまに安堵の表情を見せた。理不尽な気持ちになったけど、部屋の隅に積んである中身のない段ボールを折りたたむことでクサクサした気分をごまかした。

「いきなりごめんな。変なこと言って」

「別に。変なのは最初からだし」

 公園で初めて会った時のことを私は口にした。空の投げた紙ヒコーキが頭に当たった瞬間の感覚が、ふとリアルに蘇る。

「俺、そんなに変だった?」

「木登りしてる人なんて初めて見た」

「あの時はたまたまだよ。高い場所がなくて」

 変なのは私も同じかもしれない。こうしてかまわれることすら面倒くさいのに、なぜか空と話してしまう。

 シャクだけど、気を張らずこんなにも自然に会話が成立する相手に出会ったのは初めてかもしれない。生まれた時からそばにいるお母さんですら、その存在を前にすると私はいつもどこか緊張してしまう。同級生を前にしてもそう。威圧感を肌で感じるから。

 それは相手のせいかもしれないしそうとは限らない。私は人が嫌いで誰を相手にしても壁を作って心を防御してしまう。

 だから、こうして人といる時にリラックスできているのはものすごく意外で貴重なことだった。
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