空を祈る紙ヒコーキ
プレジャーディレクション始動

 バンドなんて絶対無理。空や愛大がバンド活動に夢中になる気持ちも理解できない。それに私は目立つことが大嫌いだ。人には向き不向きってものがある。

 軽音楽部に誘ってきた愛大の言葉に、返す言葉はいくらでも思いついた。それなのに、なぜか私は行くと返事していた。

「少しだけなら……」

「ホント!? 嬉しい!」

 愛大は大喜びで私を抱きしめた。もともとスキンシップの多い子で入学後も何度か抱擁されていたけど、今日の抱きしめ方はいつにも増して力強く激しかった。

「く、苦しいっ……!」

「ごめん! つい!」

 あまり反省していなさそうな調子で謝る愛大に悪い気はしなかった。はじめこそ驚いたけど、何もかもさらけ出しているような愛大の雰囲気に今ではだいぶ慣れてきたし楽しい気分になる。

 初対面の頃、アミルに似ていると思ったことが申し訳なかった。愛大はアミルとは違う。こういう女子もいるんだなと新発見し嬉しく思う。

 放課後、帰りのホームルームが終わると同時に私と愛大は軽音楽部の部室を訪ねることにした。部室へ行った後すぐ帰れるようにカバンを持って教室を出た。

 私達の教室がある校舎と並ぶように建てられた二階建ての別校舎が部室棟。軽音楽部の部室は部室棟二階の一番奥にあるらしい。愛大が調べていた。

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