愛するほどに狂おしく
強がりのあとの誘惑

2日なんて本当にふぅっと息をついたらあっという間で。
空港で「じゃあ、いってきます」と私を抱きしめた誠の胸の鼓動を、ずっと聞いていたいなんていう願いは叶わなかった。
みっともないとこ見せたくない、それだけの理由で私は笑顔で手を振った。
「気をつけてね」なんてかっこつけなかったら、あなたは振り向いてくれたのだろうか。
そう思いながら、空に一筋の雲を伸ばす飛行機を私は見えなくなるまで追った。
家に着くと理がいて。
「やっぱりそんな顔してると思った」って言いながら、私のカバンを当たり前のように腕から取り、抱きしめる。
なんで涙が溢れるのはここなんだろう。
安心感とか信頼感だとか、家族だとか恋愛だとか、もう全部わからない。
この家に平然と住める理も、それに気づかない誠も、それを許してる私も、全員おかしい。
私を平気で抱ける理も、私に変わらないだなんて言える誠も、影で家族壊してるのに離れられない私も、みんな変だよ。
でもやっぱり。
一生を誓いあったのに誠を遠くに感じてしまう私、乗り換えるつもりなんかさらさらないのに純粋な理の気持ちを拒否できない私、遠くに感じるけど求め続けてる私、なんか違うけどくすぐったい言葉をくれるから近くにいる私。
私がやっぱり一番、クレイジーだ。
誠も理も大切な人なのに、私が傷つけてどうする。
やめなきゃ、やめなきゃ、やめなきゃ、って、何回思っただろう。
だけど……
「ほら、もういいから座って。疲れたでしょ。」
この理の温かいスープを飲むと、なにか腑に落ちた気持ちになってしまうのだった。
「おいしい」小さく呟いた。
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