苦しくて、愛おしくて



「へ」

「帰る、退け」

「って」


押し込むとベットから下りる。

乱雑にドアを開け最後に振り返ると、

「っ」

奈央が珍しくビクついた。



「風呂上がりにベットあがんな、ブス」

「なっ?!」

「キモい」



本当に言いたい言葉は、どんなに絞り出しても喉から出てこないのに、

思ってもいない悪態なら、息をするように軽く飛び出てくる。





俺が本気を出して頑張ったら、奈央が俺のことを意識してくれる可能性って、1%でもある?






「(はは、ダセー…言わなくてよかった)」


奈央はきっと

この関係が変わったら、泣くんだろうけど




俺は逆に



この関係が変わらないままの方が、泣くよ。



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