楽園
心を失ったとき
「オレと…恋しませんか?」

華は翔琉に突然キスをされて戸惑っていた。

「あの…ごめんなさい。」

華は翔琉の部屋を出ていこうとした。

「待って…華さん!」

「あの人が浮気してるからアタシもなんて…そんなこと簡単に出来ないよ。」

「華さんは充分魅力的だから…もっと自分に自信を持って欲しいんだ。」

「ごめんなさい。」

華は部屋を出ていった。

今の華にそんなことを受け入れる余裕はなかった。

その夜、健太郎はいつも通りの時間に帰ってきた。

華は迷っていた。

健太郎にホテルの領収証を出すかどうか…

「ただいま。」

「お帰り。」

自分の態度が普通じゃないのがわかった。

「華、どうかした?顔色が良くない。」

「ごめん、ちょっと頭痛い。
先に寝るね。」

華は自分の部屋に入ってベッドに潜って泣いた。

健太郎の事が許せなかったけど
その事を問い詰めると自分が傷つきそうで怖かった。

結局、何も言えないまま華は逃げた。

"華さん、大丈夫?"

翔琉からのメッセージが届いた。

華は翔琉とキスした事を思い出した。

自分が浮気したら健太郎はどうなるんだろうか?

ふと、そんなことを考えたりする。

健太郎の相手はどんな人なんだろう?

華はそんなことを考えて結局一睡も出来なかった。

次の日、華は健太郎の朝御飯を作らなかった。

「大丈夫か?

じゃあ行ってくるな。
何かあったら連絡して。」

華は返事もしなかった。

このままではおかしくなってしまいそうだった。

華は心のバランスが取れなくなって翔琉を訪ねた。

「華さん、大丈夫?顔色が悪い。」

翔琉は華をベッドに座らせた。

「結局、何にも言えなかった。

でも黙ってるのも息が詰まりそうなの。

このままじゃおかしくなりそう。」

翔琉は華を抱きしめた。

「オレが華さんをその苦しみから救ってあげる。」

翔琉は華にキスをして、華は翔琉に身を任せた。

翔琉は舌をあらゆる場所に這わせて
華は快楽に溺れていく。

華の声が翔琉の耳を刺激して翔琉は衝動を止められなくなった。


全てが終わると華は少しだけ楽になった。

「これであの人と同じになった。」

華はなぜか悲しくなって泣き出した。

翔琉はただ華の乱れた髪を撫で、華が泣き止むのを待っていた。

「華さん、後悔した?」

「アタシね、こういうことするの3年ぶりなの。
夫はアタシに触らないし…寝室も別なの。」

「そうだったのか…」

「こんな気持ちもう忘れちゃってた。
アタシはこのまま誰にも触られずに老いてくのかなぁって思ってたから。」

「勿体ないな。華さんはこんなに綺麗なのに…」

華はその日夕方まで翔琉の部屋で過ごした。

華は翔琉のベッドで眠り、翔琉の作ったご飯を食べた。

そして健太郎のご飯を作るために部屋に戻って行った。


その夜、健太郎はいつもより少し遅く帰ってきた。

華はそれでも気にせずにいられた。

それは翔琉のお陰だった。

間違っているのはわかっていたけど
華はもう昔の自分に戻れなかった。
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