「おや、偶然」



その週の中ごろ、制作チーム5人でクライアントの待つオフィスビルに入ろうとしたとき、入れ違いに出てきた集団の中のひとりが、のんきな声をかけてきた。

こちらの先頭を歩いていた灯が、げんなりした顔になる。



「海堂…」

「もしかしておたくもコンペ? うち今プレゼン終えてきたところだよ」



一樹先輩はスーツ姿で、後ろにディレクターやその他クリエイティブ系らしきカジュアルな格好の男性を数名連れている。

制作チームの3名が不思議そうに灯を見た。



「あ、ええと、こいつは…」

「ゼロです、どうも」

「ゼ…!」



にこっと余裕たっぷりに笑う先輩と対照的に、こちらの面々は色めき立つ。

その反応を見ても、ゼロ側は無関心そのもので、一人なんて堂々とヘッドホンをし、ガムを噛んでいる。

いかにも、目的のためだけに集められた傭兵集団て感じだ。

ばらばらの個が集まり、各人が腕で勝負しています、という雰囲気は、一種、周囲を圧倒する雰囲気がある。



「お前のところも参加してたのか」

「うん、そろそろこういう大手さんとも仕事させてもらおうと思って。でもやっぱり反応厳しかったよ、イロモノ扱いで」

「そういう先入観、もったいないよな」



残念そうに顔を曇らせる灯を見て、うちのメンバーが、あの人いったいどっちの味方なんですか、という視線を私に向けてきた。



「まあ、ここはビーコンさんが持ってくんじゃない?」

「そのつもりで来てる」

「後で話聞かせてよ、じゃあね」



通り過ぎざま、私に軽く目配せし、先輩たちは駅のほうへ歩いていった。

てんでんばらばらの風貌の集団。