と笑う髭の男性も、創現を抜けてビーコンの最初の社員となったひとりだ。

私も仕事の手を止め、疲れた息を吐いた。



「時代錯誤って言ったら、ビーコンがここまで成長したのに、感情的になってずるずると取引をせずに来たうちの父そのものですよ」



噂が本当なのだとしたら、父のほうから関係修復を言いだした可能性もある。

「娘をやるから取引させてくれ」なんてね。

さすがにないと思いたいけれど。



「とすると、やっぱり結婚の話も、あながちデマじゃないんじゃないか?」

「まさか」



灯が軽く笑い飛ばした。

デスクにもうひとりいた、同世代の男性も話に加わった。



「社長たち、勝負でもしたんじゃないですか、お互いの大事なもの賭けて」

「あー、それで全部水に流そう、みたいな」

「そうそう、決着つかなくて、結局お互いどうぞって」

「これでカードゲームとかだったら笑っちゃうけどな」



ははは、と笑い合う彼らを見て、私と灯は黙ってしまった。

案外、そんなのが真相かもしれない。

父たちの性格を知っているだけに、それを否定できなかったからだ。


 * * *


「カードゲームじゃない、ボードゲームだ」



年明けに帰省すると、20年ぶりに二家族が集められた我が家の客間で、ふたりの父親は堂々とそう言ってのけた。

すれ違っても視線すら交わさなかった長年の冷戦が嘘のように、「なー」なんて首をかしげ合っている。

私たちは言葉を失い、やがて灯が隣で低くつぶやいた。



「変わんねーよ」