恋色流星群




部屋の外で話していた航大が戻ってきて。
私より目線を下げて、しゃがんだ。



胸から感じた、航大の香りが薄く舞う部屋で。
私だけ一人、ソファの上。







「理沙、ごめん。俺これからまた仕事戻らないといけないんだけど。」

『・・・全然大丈夫だよ。私のほうこそ、ごめん。』




青いマグの紅茶は柔らかく冷めて。

ただ甘く、レディグレイの香りを放つ。







ひとしきり泣いた後。

手を引かれるままに車に乗り、航大のマンションへ連れて来られた。






ここへ来るまで。

俺の何分後に上がって来いだの、部屋への上がり方だの指紋認証だの。

いろいろ面倒なことを言われたはずなのに。


無事たどり着いたドアを開けて、腕の中に戻れたときは。


枯れたはずの涙がまた溢れた。









初めて訪れた航大の部屋は、この色男のプライドを感じさせるシンプルで生活感のない部屋で。

当たり前だけど部屋中から立ち上がる航大の気配が、くすぐったさと落ち着かなさを与えた。





『私のことは気にせず、もう仕事戻っていいよ。
ただ、悪いんだけど・・・明るくなるまで、ここにいてもいい?まだ一人であそこに帰るのはちょっと怖いかも・・・。』




あの後、航大の腕の強さで。体は何度も上書きされたはずなのに。


私を覗く暗い目と、引きずられた体の感覚がリアルにフラッシュバックしては。

鳥肌が立った。








「いや、俺が帰って来るまでここにいて。」




大人が子供を優しく見上げるように。

いつになく、ゆっくりと話す。






「また朝方に少し戻って来れるから。その時マンションまで送るから。だから、それまでここにいろ。」

『や・・・けど、』




嬉しい。

けど、それと同じくらい申し訳ない。



嬉しいと申し訳ないを半々に合わせたら。
何ていう感情になるんだろう?

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