恋色流星群

13♯陽斗side


お店を出て、いつものように別々にタクシーを拾おうとしたら。
直生さんが珍しく「送る♡」と一台のタクシーを止めた。




走り出した車の中で、彼女になのか酒になのか。ぼうっと酔った頭でバックシートにもたれていると、直生さんが話しかけてきた。


「いい子でしょ、理沙ちゃん。ナンバーワンなだけあるよなぁ。」


ああ。あの子ナンバーワンなのか。
甘い痺れが、また胸に広がる。






「って、俺もまだ二回目なんだけどね。
前回、倫さんに連れてきてもらったんだ。あの倫さんが、倫くん呼ばわりされてた。笑」


倫くんか・・・あの声で。

たまんねぇな。
にやける口元を、ヒゲを触るようにして隠した。






「チョコと・・・航は。」

チョコと航も?




「航は、よく会ってるみたいよ。」








・・・ああ、これか。


直生さんが今日は同じタクシーに誘った理由。

航に、彼女以外に誰かがいることはメンバー全員気づいていた。
その思いが、日に日に色濃くなっていることも。









「・・・ありがとうございました。」

いろんな意味を込めて、俺はやっと呟いた。
いーえ、と直生さんはかすかに笑い、もう話しかけて来なかった。








教えていただいて、ありがとうございました。

だけど、何となく気づいていたのかもしれない。
彼女の香りは、俺のよく知る香りだった。









航と、同じ香水。









この世界には、分かってはいても、やめられないこともある。
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