恋色流星群

12♯チョコside


またしても予想さえしなかった名前に。
聞き間違いかと、思った。



「陽斗さん?
あれ、会ったことあったっけ?」

『うん、直生さんが前にお店に連れてきてくれたの。
私が空気読めてないわけじゃなければ、瀬名ちゃんたちが気にしてたのは要さんの反応だと思う。
私、今回は“突如現れた人”役らしいからね。相手が知り合いで、要さんが変に心の準備しちゃうと、だめなんじゃないかな。』






理沙子が空気を読めなかったわけがない。

隠そうとしてたのは、間違いなく陽斗さんからだ。






今回、出演者の女優と唯一絡みがあるのは陽斗さんだった。

俺や航さん、その他のメンバーは代わりにソロパートがあって。
陽斗さんだけが自分のパートで女優と絡む。




つまり、理沙子と共演するのは陽斗さんだけってこと。







確かに、直生さんが敢えて一度顔合わせさせたのも、相手が陽斗さんなら容易に納得できる。


演技経験がほとんどない陽斗さん。
しかも相手にいきなり理沙子みたいなのが来たら、テンパって時間押しまくりだったかも。






陽斗さんか。





陽斗さんと、理沙子と、航さん。









触れてしまいそうになった何かに気付いて、慌てて手をひっこめる。






『んー!チョコの、甘くておいしーねー!』


目の前の理沙子が、俺のドリンクに口をつけ無邪気に笑った。











それにしても、瀬名さんはなかなか現れない。瀬名さんを一人で待つというから、軽く時間潰しに付き合うつもりで理沙子をバーに誘ったけど。

瀬名さんのお迎えは、なかなか来なかった。



スタッフミーティングって、こんな遅くまでやってるんだな。

スタッフだって、1日俺らと同じように動いてたはずなのにな。
その後も、こんな時間まで終わらないのか。




夕方に解放された俺でさえ、今こんなに疲れて眠いのに。

瀬名さん、女子なのにすごいな。俺でさえ、今こんなに________







そう、俺は今、限界まで眠たかった。

気を抜くと失神しそうなくらい。







目の前には、ほわほわと酔っ払い。

白いオフショルダーのワンピースで、ニコニコと体育座りをする理沙子。

うっとりした顔で顎を膝に乗せ『たのしーなー・・・』なんて呟くから。






自分、今にも寝そうなんで部屋まで送ります。
なんて、可哀想で言い出せない。




カウンターの奥からは、チラチラと理沙子を伺う狼たちの視線。

絶対、ここに一人で置いて行くこともできない。





頼む、瀬名さん。


早く来て________
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