恋色流星群

7#航大side



わざわざドアまで見送りに来た陽斗は。



「ずるいことも遠慮も、したくない。フェアにいこう。」


熱に浮かされた顔で、持ち前の熱さを見せた。


「うん。笑」



もしかしたら、恋をする陽斗を見るのは初めてかもしれない。

可愛い、と思ってしまう。
今にも、足元すくわれそうなんだけど。




「あとさ、俺が言うのもなんなんだけど。」


伏せた目は、優しさと穏やかさを発しながら。


「全員を傷つけないのは、無理だよ。航は優しいから全部をうまくいかそうとするけど。
誰を一番、傷つけたくないのかだと俺は思う。」







はっとする。



この男の深さに

改めて気づかされる。




何も話してなかったのに。
何もかも、知っていたのか。






航が決めることだけど、と細くなった目は。限りなく優しく。
同じ人を想う仇には、到底思えない。


どんな時にも、俺たちはこうなんだろうな。

仇には到底なれない運命だ。









「うん。ありがとう。」


感じた全ての感情を込めて告げ、ドアを閉めた。









気持ちがなくなったからといって、愛した記憶はなくならない。


初めて、愛した人だったから。
どんなに時間がかかっても、訪れた別れを理解してもらうのが俺の責任だと思っていた。




そのことで、もし理沙子が、

傷つく瞬間があるのなら。






それは、責任なんかじゃない。








俺の、エゴだ。

< 78 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop