恋色流星群

14


携帯の震える音で目が覚めた。

暗い部屋のサイドボードの上で青白く光る携帯。
私・・・寝てた・・・?


手を伸ばそうとしたところで、後ろから伸びてきた手に取り上げられた。



一瞬の間の後、


「・・・はい。」

頭上で聞こえてきた声も、掠れた鼻声。

これが航大の寝起き声なのかなぁと。私は体勢も変えず、ぼんやり思う。






「・・・ああ。薬は飲ませた。・・・うん。大丈夫、と思うけど。」



瞼が重くて、航大の声を上に聞きながら目を閉じる。

ちょっと寒いな、と感じると。
同じタイミングでぎゅっと、後ろから腰に左腕が回された。


なんか、すっぽり、って感じ。
あったかくて気持ちいい。

私、航大の腕の中で寝てたのか。






「・・・つーか、こんな時間にかけてくんじゃねーよ・・・。」




誰と話してるんだろ。

瀬名ちゃん?
ていうか、私の携帯だし。私にかかってきた電話じゃん。



窮屈な与えられたスペースの中で。うーん、と真上を見上げると。



「もうかけてくんなよ。」



綺麗な形の眉を寄せて眩しそうに顔をしかめた、航大。
これが航大の、寝起き顔。



画面をタップして通話を切ると。

私の手の届かない、反対側のサイドボードに置いた。








「・・・寒くねぇ?」


後ろから、私の首にキスするように顔を寄せて囁く。


くっつきすぎ。

なのに、微睡んだこの感じ。抜け出せない。




『寒い。喉も乾いた。』




シュッという、シーツの衣擦れの音。

ベッドを抜け出して、キッチンへ向かう気配。



そっと振り返ると、上半身を露わにして冷蔵庫を覗いている姿が目に入った。



つーか、なんで裸なの・・・

よく見ると、髪もサラサラペタンコ。シャワー?浴びたってこと?






顔ちっちゃいな。
羨ましい長身。スタイルがいい。


それに。

なんだその、肉体美。








水を二本抜き出して。
あくびをしながら、こちらへ戻ってくる。

目があった。





「えろ目で見てんじゃねぇよ。」


片側だけ上げて、笑む口元。


『見てねーよ。』


開けてくれたペットボトルを受け取りながら、悪態をつく。





水は口元を流れて、ポタポタと喉を伝ってシーツに落ちた。


愛しそうに髪を撫でる手が、優しすぎてくすぐったい。









だけど私は、こんな目眩に負けられない。


聞かなきゃ。

知らなきゃ。

知らずして、これ以上この男の腕に抱かれるわけにはいかない。








ローズの香りの

棘に触れる。

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