強引専務の甘い手ほどき
第2章。

季節のケーキ。秋の新作。

翌週も専務と石神さんは忙しい。
2ヶ月前に専務に就任した時に
(その前の3月の終わりまでは営業部。もちろん、優秀だったと美鈴ちゃんが言っていた。)
湘南地域の新しい駅ナカのビルに、販売店出すことを任されたらしい。
ルピナスは駅に出店する時は
近くにパティシエに任せる支店を出し、駅の店に供給すると言う形をとっている。
2店舗同時に開店させるため、とても忙しいのだ。

本社で会議をし、取り引き先に出かけ、夜のお付きあいもある。
そんな中で、時間を作ってくれているらしく、
数日に1度夕食を一緒にとるようになった。
打ち合わせと言って連れだされるけど
特に話はない。
(2回目の食事の時に、シャツを汚したお詫びに用意しておいたハンカチを渡した。クリーニング代も食事もお金は受け取ってもらえそうになかったし…。専務はちょっと嬉しそうに受け取ってくれて、時折、使ってもらえているみたいだ。)

もちろん、石神さんも一緒だ。
この間みたいに酔っ払ってカエデちゃんちに押し掛けても困る。
って事らしい。

まあ、そうかな。


専務は楽しそうに食事をし、わたしを運転手付の車で送り、
また、仕事に出かけて行ったりもする。

私の瞳を真っ直ぐに見つめ、楽しそうに笑いかける。

専務は私とのたわいのない会話でもリラックスできるらしく、
「カエデと話すと、いろいろな事がリセット出来る。俺にとって大切な時間だ。」
とそう言って私の顔を覗き込む。

見つめられると、
鼓動が跳ね上がる。

私といてもそう、面白いってわけじゃあないと思うんだけど…

でも、
少しずつ距離が近くなって来ている。

最近はそう感じるようになってきた。
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