哭く花
静鳴


長い休校が開けた。


静鳴の街は夏が近づいていて、

セミの声が遠くから聞こえてくる。

随分と長い雨のあと、出来た川が引くまで

外には一歩たりとも出ることが出来ない。

静鳴の特徴でもある。

その川が引くまでの間、小波のような、

小さなかすかな音が静かに鳴り響く、

そこからこの町の名前もついた。



念のため長靴を履いて、ドアを開け、

深く息を吸い込む。

晴れの匂い。

今日は始業式。

家の外では、柱の横に幼なじみの姿が見えた。

「ゆっ、夢ちゃん!」

久しぶりに出す大きな声は、加減がわからなかった。

「美岬おはよう!元気だった?」

長い茶色のくせっ毛をお団子に束ねた元気な女の子。

椎名夢架ちゃん。

私の小さい頃からのお友達。

夢ちゃんは私に会うなり肩を叩きながら

休校の間にあった出来事を話した。

私も夢ちゃんの話を聞きながら、

ゆっくりとあゆみを進めた。
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