笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
10 ◇ 笑顔を持たない少女と涙を持たない少年




教室の窓からは、ところどころに秋が見えていた。


コツ、コツ、と何度も、チョークが黒板を走る音が教室に響き渡る。


その音に引き寄せられて黒板に目をやれば、今目の前で授業をしている教師の字の横に、前の授業の教師が書いた文字の跡が何か所にうっすらと残っていた。


きっとそれは教師のせいだけではなく、昨日の掃除担当の生徒のせいだろう。


雑にしか消していなかったのだと思う。


ほとんどの生徒が嫌がる掃除当番だけど、私は嫌ではないから。


今日は久しぶりに、この教室を掃除してみようか。


「次の問いを――沢野」

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