イジワル御曹司のギャップに参ってます!
第一章 私と彼の穏やかじゃない日常
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静まり返った会議室に、私の声だけが響いていた。

薄暗い照明の中、プロジェクターの少しくぐもったライトが私の背中を照らしている。
注がれる視線。
全神経が集中力を増す。研ぎ澄まされた脳が自然と相応しい言葉を選んでくれる。

プレゼンの緊張感は、嫌いじゃない。
誰もが私の熱い思いに、耳を傾けてくれるから。

特に今日は顧客相手ではなく、社内プレゼンだから気楽なものだ。
もちろん、気楽というのは、気合が入っていないという意味ではない。
仕事には常に全身全霊全力で取り組む、それが私――朱石光子(あけいしひかるこ)のモットーだ。

証拠に、今日の私の下着は勝負の赤色だ。
この色を着て落とせなかったプレゼンはない。

胸まである長い髪をアップにし、口元には新作のルージュを引いていた。
糊の効いたシャツとパンツは、堅苦しくなり過ぎない七分丈。
手首と胸元に嫌味にならない程度のアクセサリー。
誰が見たって、出来る女。
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