los episodios de suyos
2.fragancia no puedo olvidar
 ――あれは、故郷では桜が咲き乱れる4月のことだった。首都のローマから離れ、やや西北に位置した場所にあるここ・フィレンツェは、“芸術の街”として名高い。

 目覚めたのは、朝食のロトロ(ピザ生地でハムとルッコラを巻いたもの)の良い香りが鼻を掠めたからだ。メイドのナタリーの『群様おはようございます』という優雅なイタリア語で、気持ち良く朝を迎えた。



『昨日は遅くまで任務お疲れ様でした。デザートはいかがなされますか?』

『いや……今日は良い。』

『あら珍しい!さてはローサの新しいボスの就任式にご出席なさるから、緊張してらっしゃるのね?』

『当たり前だ。あのローサだぞ?しかも後任は“闇世の帝王”の娘だ。活躍はチラッと耳にしているが、どんな奴なのか楽しみだぜ。』

『まぁ、好奇心と緊張感を同時に味わっていらっしゃるなんて素敵じゃないの。』



 元殺し屋であったターコイズの瞳の主が小さく笑って言う。もう50代も半ばであろう彼女は、我が子を慈しむような目を俺に向けていた。

 ローサといえば、ウチと並ぶ大規模ファミリーの一つだ。前任のフェルナンドさんとは勿論話したことがあるが、娘に会うのは今回が初めてになる。
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