江戸のうどん屋で働き始めました


反応は当たり前のようにない。

いくらこの家が大きいからといっても、この部屋の中にいる彼ら─祖母と叔父、叔母、従姉たちに私の声が届いていないはずがない。



そう…私、篠木(しのき)美弥(みや)はこの家で存在しないもののように扱われている。


いや、一つ上の二人の従姉は、そんな私の様子を見て、綺麗な顔に嫌な笑みを浮かべてこそこそ何かを言い合っているので、「存在しないもののように」というのは語弊があるかもしれない。


私は、彼女ら以外誰も見ていないけど、一応礼をしてから、典子さんの元に戻る。




この家で私と話す人は二人。

一人は典子さん、もう一人は亡くなった祖父に若い頃から仕えていたという、老齢の(さとる)さん。


その他の「家族」との会話は、よっぽどのことがない限り、この二人のどちらかを通じて行われている。



その上、私の居場所がないのはこの家だけじゃない。



3年ほど前に転校させられた学校でもそうなのだ。

お嬢様、お坊ちゃまたちの集う学校。

この篠木家に来るまで、一般庶民だった私が馴染めるはずもなかった。


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