江戸のうどん屋で働き始めました
やっぱりここが、私の居場所
***


神社を出ると、やはりそこは多くの家が並ぶ住宅街ではなかった。

着物を着た人たちの行き交う様子を見て、私はタイムスリップに成功したことを確信する。



「雅春さん…どこにいるんだろ」



またこの場所に戻って来れたのだという感動よりも、雅春さんに会いたいと急く気持ちの方が強い。


久々の和服と下駄はやはり動きにくいが、そんなことに構わず辺りをキョロキョロ見渡しながら歩く。



「…むやみに探しても見つからない、か」



しばらく近辺を歩き回った後、私は足を止め考え込んだ。



…雅春さんがいそうな場所といったら



徳々麺、屋敷、他には──



「あっ、もしかしたらあそこかも…!」



一つ可能性の高そうな場所を思い出した。


いつだったか、一人になりたい時に来ると言っていた橋である。


その橋がどこにあるのかは分からないが、そこまで遠くはないはずだ。

探してみるしかない。


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